「訪問による家族支援」普及活動英国メリデン版家族支援プロジェクト

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精神障害者家族会の全国組織である全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)では、設立以来「家族支援」の実現に取り組んできました。この「家族支援」とは、家族に特別な支援を求めるものではなく、本人と家族が共に家族の一員として、家族(家庭)全体への支援を求めるものです。しかし現状の家族支援は「支援者としての家族」としての支援が中心であることが少なくありません。

このような中で、英国では「Family Work」という家族支援技術が開発され、実践されています。このFamily Workで提供される支援は、「個々の家族に対する、訪問による、家族(家庭)全体への支援」であり、まさにわたしたちの求める支援です。わたしたちは、このFamily Workを日本に広めて、本人と家族が共に支援される社会の実現をめざします。

この事業は、ジャパンファミリーワークプロジェクト に引き継がれています。
以下の記事は、2017年までの取り組みを紹介するものです。

本プロジェクトについて

公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)とは、精神障害者家族会の全国団体です。

みんなねっとでは設立以来、「家族支援」の実現のために様々な取り組みをおこなってきました。そのひとつが、2009年に全国の家族会員を対象に実施した、家族支援に関する調査です(有効回答数4419名/回収率48.3%)。

" 調査の中で見えてきたのは、「病状が悪化したときに必要な支援がない」「困ったときに相談できるところがない」「必要な知識や情報が得られない」という、孤軍奮闘する家族の姿でした。今なお、家族は「支援者」として終わりのない役割を引き受けています。

調査結果からまとめた「わたしたち家族の7つの提言」では「訪問型のサービス」や「家族に対する適切な情報提供」など、家族支援を具現化するための切実な声があげられています。

そのような中、私たちは英国バーミンガムのメリデン地方で「Family Work」という家族支援技術が開発され、実践されていることを知りました。この「Family Work」で提供される支援は、まさに私たちが求め続けてきた「個々の家族に対する」「訪問による」「本人も含めた家族全体への支援」でした。

近年、家族支援が重要視されるようになってきましたが、現在の家族支援は「支援者としての家族」に対する支援が中心です。しかし、私たち自身も地域で“普通に暮らす”ために支援を必要としているのです。待っていてもこの状況は変わりません。それならば、私たちが本当に求める家族支援システムを自分たちの手で広げていこう!と決心しました。

“Nothing About Us Without Us”(私たちのことを、私たち抜きに決めないで)日本での家族支援を実現するために、私たちは本プロジェクトに取り組みます。

英国メリデン版家族支援について

Meriden Family Programmeとは

Meriden Family Programmeとは,英国ウエストミッドランドにあるメリデン(Meriden)という地名にちなんでつけられた精神障害者(児童青年期や高齢期を含む)の家族支援技術の研修機関で、Birmingham and Solihull Mental Health Foundation NHS Trust内(国民医療保健サービス:National Health Service)の一部門です。1998年より家族支援プログラムの開発と支援者の訓練をおこなってきており、基礎研修修了者4120名、トレーナー研修修了者247名(2011年現在)と英国で最も多くの研修修了者を輩出している世界でも有数の家族支援に関する研修機関です。

Family Workの内容

Family WorkはこのMeriden Family Programmeによってトレーニングされている家族支援技術です。特徴的なのはこの家族支援技術の目標で(1)個別に、主に訪問によって長期間にわたって本人と家族を支援し続ける、(2)本人と家族がいずれ自分たちの力で困難を乗り越えていけるように効果的な問題解決や目標達成ができる技術習得の機会を提供する、(3)精神障害者本人を含めた家族がそれぞれの生活を自分らしく生きることとし、本人と家族と共に支援する「Work with Families」を大切にしています。専門的には、行動療法的家族療法(BFT:Behavioural Family Therapy)といわれるものが原型で(1)病気や治療・社会資源などの情報について本人と家族と共に学ぶ、(2)ポジティブなコミュニケーションのあり方を練習し実践する、(3)家族の中で話し合いがうまくできるよう練習をする、(4)再発のサインを本人と家族とで共有しサインが出たときにどう回避するかを相談しておくなどを、訪問をしたスタッフが本人と家族を交えて、話し合いながらおこなうものです。しかも、この方法は家族一人ひとりの現状やニーズを踏まえて本人と家族と相談しながら進めます。また、この方法は家族全員で参加することが最も効果的ですが、この支援を受けてみたい人が家族の中にひとりでもいれば、まずひとりからでも始められる方法です。

Family Workにおける効果(エビデンスについて)

このFamily Workについては、支持的個人療法(医師等のカウンセリング)を受けている者を対照群とした場合、開始9カ月後の再発率が、Family Work実施群6%と対照群44%より有意に低く、さらに月1回の家族のフォローアップを続け2年後に調査したところ、家族介入群17%と対照群83%と再発予防効果は2年後にも維持される結果でした。これらの研究成果から、イギリスの王立医療評価機構NICE(National Institute for Clinical Excellence)統合失調症ガイドラインにおいても、Family Workをはじめとする一家族単位で本人も交えながら何年にもわたり個別的に支援する密度の濃い家族支援(Family Intervention)は、代表的なEBP(Evidence-based practice)プログラムの一つとされており、イギリスの精神保健医療福祉の標準的な支援の一つとなっています。

今後の計画

本プロジェクトは、「Family Work」の日本での普及を目的としています。そのため、今後数年をかけて家族支援の必要性についての理解を促進し、専門職の皆さんに家族支援技術を身につけていただくための研修会を開催していきます。

今後の計画

「英国メリデン版訪問家族支援」普及プロジェクトにご寄付をいただいた皆さまに感謝申し上げます