■身体拘束を考える会としての要望書提出
厚生労働省が実施している「精神保健福祉資料(630調査)」について、従来、自治体で情報開示してきていましたが、厚生労働省の通知厚生労働省の通知および日精協声明を理由に非開示になる例が多く発生しています。
みんなねっとは、精神科医療の身体拘束を考える会を通じて、各自治体が従来通り情報開示を行えるように措置すること等の要望書(PDF,テキスト)を提出(2019年2月19日)してきました。
厚生労働省回答
厚生労働省は、あくまでも開示非開示は自治体の判断に委ねられる案件で、原則論を通知したに過ぎず、非開示を促す意図はないとしていましたが、「2019年の厚労省障害保健福祉関係主管課長会議資料12頁」にて、下記の通り、「情報開示については、従来どおり各地方公共団体において、それぞれの条例に基づき判断されるものであり、今後とも適正に対応されるようお願いする」と改めて明言されました。よって、今回の要望が反映されて、情報非開示の根拠にはならないことが確認できます。
各県レベルでも、都道府県に対して、従来通り情報の開示をするべきである旨の働きかけを行うことが重要です。
要望書は下記PDFにてダウンロードできます。
要望書内容(テキスト版)
厚生労働大臣 根本匠 様
630調査の今まで通りの開示を求める要望書
精神科医療の身体拘束を考える会 代表 長谷川 利夫
630調査の今まで通りの情報開示を求める院内集会 参加者一同
精神保健福祉資料630(ロクサンマル)調査は、個々の精神病院の情報がわかる貴重な資料である。
今まで全国において、市民が各自治体に対して情報公開条例に基づき開示請求し、精神科病院の状況がわかるように情報誌を作成するなど地道な活動が行われてきた。
しかしながら、近時、この630調査の情報開示請求に対して非開示決定が相次ぐ事態が発生している。
昨年の8.月21日に毎日新聞は、精神病床のある全国の病院で、50年以上入院する精神疾患をもつ患者が全国で1773名いると報道した。これは全国の630調査を丁寧に開示請求してわかった人数である。
同時に鹿児島県の精神科病院に55年入院し続けている80歳の女性を取材し、生の声を掲載している。
これらは素晴らしい調査報道であり、これにより国民の知る権利が実現されることは望ましいことである。
ところが日本精神科病院協会は、その2か月後の平成30年10月19日に「精神保健福祉資料(630
調査)の実施についての声明文」を発表し、この中で上記毎日新聞の報道に触れながら「個人情報保護の観点から問題点が多い」としたのである。さらには、「患者の個人情報につき責任を持つ立場の精神科病院としては、必要な措置が行われない場合は、630調査への協力について再検討せざるを得ない」ともしたのである。
言うまでもなく、630調査の中には、個人情報保護法でいうところの「特定の個人を識別できるもの」は存在しない。それにもかかわらず、「個人情報保護」を連呼し、調査そのものの非協力をちらつかせる態度に理は無い。
むしろ630調査にあるような医療に関する情報は、非常に高度な公益性があると考える。情報の共有化による医療の質の向上、患者の医療選択権の保障の観点からもその公開は極めて重要である。
これに対して国は、昨年7月3日の参議院厚生労働委員会の答弁で「国の方で、都道府県が公表するなとか、そういうようなことを決して申し上げるつもりはございません。」としている。これは正しい態度である。しかしながら、国はその10日後の7月13日にその答弁に反し、各都道府県・指定都市宛文書を発出し、その中で630調査について「個々の調査票の内容の公開は予定しておらず」などとし、「管内の精神科医療機関に調査への協力依頼・調査票の送付を行うに当たっては、その旨を明示した上で協力を求めること。」としたのである。これは明らかに7月3日の政府答弁に反している。さらには同文書では、医療機関から提出された調査票について「個人情報保護の観点から、各自治体において定められた保存期間の経過後に速やかに廃棄」することまで求めているのである。
このような文書を発出されることにより630調査の非開示決定が全国で相次いでいる。現に各自治体は、何故今回から開示を非開示に判断を変更したかにっいて、厚生労働省の同文書、日本精神科病院協会の声明文をあげて説明している。
私たちは以上のような状況を早急に改善することを国に対して強く求める。
具体的には、以下の通りである。
1.平成30年7月3日の政府答弁通り、国から自治体に対して630調査の個々の調査票は非公表であるなどということを述べることを止めること。厚労省発出文書によって発生している事態については、国は責任を持って、7月3日の答弁通りの内容が実現されるように何らかの措置を行うこと。
2.個人情報でない貴重な情報の「速やかな廃棄」を推奨するような取り返しのつかないことを止めること。