「みんなねっと精神科医療への提言」を補う優れた資料的番組放映をうけて
みんなねっとは、誰もが安心してかかりたいと思える精神科医療を実現するため、「みんなねっと精神科医療への提言」を発表しています。
精神疾患は日本の医療法の5疾病のひとつで、生涯を通じて5人に1人がこころの病気にかかるともいわれています。こころの病気は特別な人がかかるものではなく、誰でもかかる可能性のある病気です。そのため、全ての関係者と市民の問題として、現状の精神科医療の充実発展をめざしています。
先日、7月31日にNHK(Eテレ)で放映されたETV特集「ドキュメント 精神科病院×新型コロナ」を観た会員さんから多くの反響をいただきました。今回は、この番組の例を参考に、現状を知ること知らせることの大切さを改めて実感しました。(再放送など機会があればご視聴を推奨します)
新型コロナは世界的にも猛威をふるう感染症で未知のことがある中で、医療対策が全国民的課題となり、ひとりひとりの健康と命をどう守っていくのかと多くの人が日々対応に追われています。
その中で、精神科病院に入院する陽性患者には医療体制が保障されず、人権も命も守られていない実態が浮かび上がりました。都立松沢病院院長(取材当時)は、「多くの地域の精神科病院で身体の病気が起こった時に、(精神科入院)患者が受ける治療は精神に障害がない人が受けている治療より明らかに劣っている…」と発言しています。なぜ、一般市民が受けられる治療が、精神疾患者には保障されないのでしょうか。しわ寄せのように一番弱い立場の人たちに社会の歪みが表れていることがよくわかります。
素晴らしい取り組みをされている多くの精神科医療機関があることは承知していますが、番組の中で紹介されている状況は日本の精神科医療のまぎれもない実態でもあります。放映された内容では、精神疾患患者が新型コロナの医療対応が十分に受けられないことの他に、世界の中で入院患者数がずば抜けて多い入院中心の精神科医療という日本の現状が提示されていました。また、日本精神科病院協会長の発言として「精神科病院の役割は治療と社会秩序の担保」とありました。これらが示すのは、世界の中で日本の精神科医療がずば抜けて歪(いびつ)な状況にあることを示しています。
私たちは、このような日本の精神科医療の実際をみなさんに知っていただいたうえで、ぜひ、「みんなねっと精神科医療への提言」について一緒に考え、発展させるためのお力添えをいただきたいと願っています。
2021年8月吉日
公益社団法人全国精神保健福祉会連合会