2022年12月に、愛知県警の岡崎警察署の留置場で勾留されていた男性が死亡した事件で、警察は業務上過失致死などの疑いで、岡崎警察署の警察官ら9人を書類送検しました。
このニュースは新聞各紙の全国版でも大きくとりあげられています。
死亡した男性(43)は統合失調症と糖尿病を患っていました。通所施設とグループホームで新たな生活を始めた矢先に、慣れぬ道に迷っていたところ、警察官の職務尋問にパニックとなり、公務執行妨害で岡崎署に連行さました。保護室に隔離、手足などをベルト型の拘束具で拘束のうえ、幹部も含む複数の署員に何度も足で蹴られる様子や仰向けで後頭部が便器に入ったまま放置するなど残忍な暴行・虐待の実態が監視カメラに記録されていたのです。拘束時間は延べ140時間にも及びました。
この事案については、愛知県連からの投書を月刊みんなねっと(2023年3月号)に掲載した経緯もあり、その動向をみんなねっととしても注視していました。
今回、再発防止策等も出されていますが、この事件は岡崎警察署のみの特殊なことではなく、全国のどの警察署でも起こりうることではないかと危惧します。すでに留置された障害や疾患のある人になぜ、手錠などの拘束具が必要なのでしょうか。地域住民の安全を守るはずの警察官の障害者への無知・無理解と人権軽視が命を奪ったことになるといっても過言ではありません。
みんなねっとは、警察や司法の現場ではまだ障害者への偏見や無理解が根強く残っていることを示す事件であるとして、次の点について訴えます。
警察庁には適切な保護行為の検証と改善を求めます。さらに、すべての警察職員に対して、精神障害に関する正しい知識のための研修を定期的、継続的に実施することを求めます。
また、国に対しては、障害者権利条約に沿った警職法の改正を強く要請します。特に、保護室収容と身体拘束は、人権侵害や生命危険のリスクが高い行為であり、必要最小限度で行われるべきです。また、被留置者に対する適切な医療提供は、人道的義務であり、医師や看護師などの専門家の判断に基づくべきです。
みんなねっとは、障害や疾病のある人たちの人権と尊厳を守るために、社会全体が関心を持ち、行動することを訴えます。
2024年1月17日
公益社団法人全国精神保健福祉会連合会