みんなねっと事務局

「メンタルヘルス」国際会議(GMCS2025)報告

3 時間後NEW!
https://seishinhoken.jp/files/articles__contents/l/01krwcbd3qvt15e258d2t0y9sp.jpg

2025年10月、新銀副理事長と小幡事務局長は、ドイツのヴィースバーデンという街で開催されたベーリンガーインゲルハイム主催の国際会議に参加してきました。
会議の名前は「グローバル・メンタルヘルス・コミュニティ・サミット」です。世界25か国以上から、心の病を経験された当事者の方々、そのご家族、そして支援者が一堂に会しました。今回のテーマは「新しい心の医療を、みんなで一緒に作っていこう」というものです。
これまで、心の病気のことは「病院の先生が決めること」と思われがちでした。しかし、この会議では「実際に経験した人の声こそが、医療を変える一番の力になる」という、心強いメッセージが共有されました。世界が今、どのように変わろうとしているのか、その様子を皆様にご報告いたします。

「メンタルヘルス」国際会議(GMCS2025)報告

公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会
副理事長 新銀輝子
事務局長 小幡恭弘

1. グローバル・メンタルヘルス・コミュニティ・サミット参加準備期間について
グローバル・メンタルヘルス・コミュニティ・サミット(以下、サミット)の準備は、既に日本にいるところから行われました。
みんなねっとの新銀副理事長、小幡事務局長のほか、こどもぴあの坂本氏と小林氏の4人と、JAPAN担当のベーリンガーインゲルハイム社から高橋氏が加わり、日本として何を発信し、海外の参加者の方からはどの様な項目で聞いていくのか、リモートで計4回、話し合いました。
情報共有と言っても諸外国とは制度も文化も違う。日本ではあたりまえに思っていることでも、その説明が難しいのではないかなど、できるだけ論点がずれないようにサミットに参加できる方法を話し合っていきました。
以下が課題をまとめたものです。

アドバイザリーボード参加時のポイント
<意識するポイント>
・制度の違い:日本の制度の背景・意図を丁寧に説明する
・比較の視点:他国の制度・支援内容・人権保障の仕組みを積極的に質問する
・共通課題の発見:制度があっても使いづらいなどの声を共有し共感や学びを得る
・改善のヒント:他国の柔軟な制度や包括的支援の事例を探る

2. サミットについて
サミットの概要を説明します。今回のサミットは、メンタルヘルス・コミュニティの経験を持つ人々、介護者、患者支援者、患者団体が集まり、経験/効果的な方法を意見交換し、世界のメンタルヘルスの課題に対等なパートナーとして業界と共に取り組む3日間の恒例イベントとして開催されました。このイベントは過去にもリスボンで開催されています(日本は不参加)。
サミットはベーリンガーインゲルハイム社が主催で、患者アドボカシーのグローバルリーダーとして協力されています。

3. サミットのプログラムで期待できる主な特徴とスケジュール
GMHCS25プログラムで期待できる主な特徴
・世界中のコミュニティ・リーダとベスト・プラクティスを結び付け共有する
・ベーリンガーインゲルハイムの精神保健戦略の策定に協力
・世界中の意識向上とアドボカシー戦略について聞く
・国連NCDs及び精神保健に関するハイレベル会合の成果の議論

スケジュール

日程 1日目 2日目 3日目
9:00~10:00 開会と基調講演 開会とパネルディスカッション 開会と国連専門家会合に関する専門家の発表
10:15~12:30 アドバイザリーボード メンタルヘルスコミュニティの共通性と共有優先事項の理解:疾患別アドバイザリーボード 重篤な精神障害における患者の視点及び満たされていないニーズを理解する 地域別ワークショップ各国政府に対する国連MHの実施を求める提言
14:00~16:45 アドバイザリーボードの続き、クロージング アドバイザリーボードの続き、クロージング ワークショップのフィードバック

最初の1時間は、基調講演やパネルディスカッションを一つの会場で参加し、その後アドバイザリーボードやワークショップに移ります。私たち日本チームは通訳の関係上、同じグループで参加しました。
ワークショップでは各国の状況を説明したり、経験に基づくメンタルヘルス・コミュニティの課題に対してのアプローチを教わったり、感想を述べ合ったりしました。
強く感じたのは、どの国でも病気の理解をどのように社会に訴えていくか。スティグマの問題は万国共通でした。一方で、海外では家族会と言う団体よりは、当事者を支援する団体や、小単位の家族がエビデンスに基づいて、直接国の施策に対して訴えているケースを多く耳にしました。精神障害者と共に暮らす家族の日常の課題は、実践に裏付けられたデータとなることを痛感し、個人の問題としてとらえるのではなく、国の制度として確立させること、家族会の使命はそれに尽きるのではないかと感じました。

4. 「心」と「体」は、つながっています
会議の中で最も大切にされた考え方は、「病気だけを見るのではなく、その人まるごとを診る」ということです。
私たちは、心が疲れているときに体の具合も悪くなることがあります。逆に、体の不調が心を沈ませることもあります。
しかし、今の医療現場では、心は「精神科」、体は「内科」とバラバラになりがちです。
サミットでは、「心と体を切り離さず、その人の生活や人生全体を支える温かい医療」をめざすことが約束されました。これが、これからの世界のスタンダードになっていきます。

5. 「経験者の声」というかけがえのない宝物
もう一つの大きなテーマは、「皆さんの経験を、医療のデータとして活かす」ことです。
「この治療は自分にはわなかった」「薬の副作用でこんなことに困った」「こんな言葉をかけられて救われた」…こうした皆様お一人おひとりの「生の声」は、何物にも代えがたい宝物です。
これからは、こうした経験を「ただの思い出」にするのではなく、新しい薬を開発したり、国の支援の仕組みを作ったりする際の「重要な情報」として、活用できるという認識のすり合わせをしました。当事者の声が、医療を導く羅針盤になるのです。

6. 「偏見」という壁を乗り越えるために
会議では、世界共通の悩みとして「病気への偏見(スティグマ)」についても深く話しあわれました。
「病名がつくと自分を否定されたように感じる」「誰にも相談できず、何年も一人で悩んでしまった」という声は、国を問わず多く聞かれました。
また、最近普及しているAI(人工知能)などの最新技術についても議論がありました。
AIは便利ですが、やはり「人の温もりや共感」に勝るものはありません。技術を上手に使いながらも、人と人との触れあいを何より大切にする。そんな、血の通った医療を私たちは守っていかなければなりません。

7. これからの歩み:希望を形に
今回のサミットの締めくくりで、主催者の方は「この会議は『終わり』ではなく、素晴らしい未来への『力強い始まり』です」と話されました。
私たちはこのドイツでの経験を胸に、日本に住む皆様の暮らしがより安心で、希望に満ちたものになるよう、これからも活動を続けてまいります。 当事者の皆様が、胸を張って「自分の人生を歩んでいる」と言える社会。困ったときには、心も体もまるごと優しく包み込んでくれる医療。そんな未来を、私たちは世界中の仲間と、そして何より会員の皆様と共に作っていきたいと考えています。
遠いドイツから持ち帰ったこの「希望の火」を、これからはみんなねっとの活動を通じて大切に育ててまいります。

おわりに
ホテルの部屋の窓から見るビルでは、毎朝7時、ガラス張りのオフィスで多くのビジネスマンが仕事をされていて、生活様式の違いを感じました。アジア圏の方々とは話す土台が似通っていてほっとする場面もありましたが、欧米の方たちのダイナミックで流れるような話ぶりにはいつも圧倒されました。「表現力が豊かだったら、もっと分かり合えるだろうなあ」と帰りの飛行機の中で思ったサミットでした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

※今回のサミットへの出席は、ベーリンガーインゲルハイム製薬会社の支援によるものです。より良い日本の精神医療を目指すためにも、海外の状況を知る貴重な機会ととらえて、みんなねっとから2名が出席いたしました。今般、このような企業団体が主催する精神医療に関するイベント等が増えてきていることから、今後はみんなねっととして利益相反(COI)に関するルール整備の検討を行なうことといたします。

※報告書の全文は、下記からダウンロードできます。

https://seishinhoken.jp/files/articles__contents__doc/m/01krwcbd3wq91cz36jhdgwdmjq.jpg
PDFファイル

公益社団法人全国精神保健福祉会連合会みんなねっと事務局

167-0054
東京都 杉並区 松庵 3-13-12
03-5941-6345
FAX
03-5941-6347

都道府県連・関係団体

90日以内の更新があります
180日以内の更新があります