《みんなねっとの活動》
■みんなねっと新役員選出
平成30年6月4日、アットビジネスセンター池袋駅前別館にて開催された「平成30年度みんなねっと定期総会」は、平成29年度活動報告・決算、平成30年度活動計画、予算を採択し、任期満了に伴う理事・監事の選出を行いました。
「全国精神保健福祉会連合会新役員」についてお知らせいたします。
○代表理事
理 事 長 本條義和
副理事長 木全義治
副理事長 *岡田久実子
○理事・監事
理事 鈴木通康(山形)
理事 堤 年春(神奈川)
理事 眞壁博美(東京)
理事 *吉邑玲子(群馬)
理事 *中谷賢宗(石川)
理事 *杉本富太郎(静岡)
理事 倉町公之(大阪)
理事 鵜川克己(岡山)
理事 吉村美登利(香川)
理事 *高野良隆(大分)
理事 青木聖久(愛知)
理事 羽藤邦利(東京)
理事 野村忠良(東京)
理事 奥田和男(奈良)
監事 古池源造(茨城)
監事 *松澤
勝 (東京)
*印は新任
【平成30年度重点課題】
・賛助会員拡大強化
・社会啓発・広報事業の充実(SNS等の活用、教育推進)
・ブロック活動の強化
・多様な立場の家族との連携とつながる活動の発展
・交通運賃割引制度実現国会請願署名提出
・医療費助成制度実現の支援
・精神障害者障害年金の課題広報と要望
・全国実態調査(前年度調査の分析)
・隔離、身体拘束についての改善活動
■精神科医療の身体拘束を考える緊急集会
6月21日に参議院議員会館にて、精神科医療の身体拘束を考える会主催の緊急集会がありました。
集会には、弁護士や当事者団体、国会議員などが集まり、みんなねっとも構成団体の一員として岡田副理事長・小幡事務局長が参加いたしました。
この集会の発端は、日本精神科病院協会雑誌の5月号巻頭言の中で、看過できない発言があったからです。これを受け、緊急集会を開催し、公開質問を届けることとなりました。
ここでは、岡田副理事長の発言をご紹介いたします。
「長女が18年ほど前に統合失調症を発症し、その家族の立場で経験したことをもとに、『精神疾患を発症した人が安心して治療を受け、人としてまっとうに生きていけるよう』、日本の精神科医療が本来の医療として機能できるようになることを願って活動をしています。
その活動の中で、今年2月にベルギーの精神保健医療福祉改革の視察に同行させていただきました。
ベルギーは日本と同じように私立の精神科病院が中心の精神科医療が行われてきていましたし、病棟転換型居住施設という対策も試みたけれど失敗に終わりました。
そのような中で『入院中心の精神科医療から地域医療へ』と改革を進めてきているということで、その現状から学ぶことを目的に参加させていただきました。
ベルギーの改革は病床削減を目的とせず、『必要な人に必要なときに必要なだけ医療を含めたケアを届けるための改革』ということでした。
リカバリー志向、レジリエンス、コ・プロダクションというきちんとした理念をかかげて、私が求めていた市民中心、患者中心の医療改革が進められていることを実感しました。
私たち視察団に向けて、30人以上の方がプレゼンテーションをしてくださったのですが、その中に当事者の方が「熟練者の経験的知見の役割」あるいは、「ユーザーの視点から見た改革プログラムの基本:ストレングスとリカバリー志向のプログラム」というテーマで、精神保健医療福祉のプロフェッショナルとして、他の専門職の方々と同じ壇上に立ってプレゼンをされたことは大変に印象的でした。
入院病床をもつ精神科病院が中心の医療から、一定の地域(人口60万人ほどの地域)のメンタルヘルスに責任をもつネットワークが中心の精神科医療へと移行していました。
その基本は、生活の場でケアすることです。診断名でレッテル張りをせず、入院も含めた治療は地域生活とのブランクをつくらないことをコンセプトに、モバイルチームという目的別(早期介入・長期支援・急性期対応)のアウトリーチチームが生活の場でケアします。
まだ、道半ばだとのことですが、病気や障害を持ちながら地域で暮らし続けることを本気で考えた改革、患者自身の回復していく力を信じ引き出す医療、患者や家族、一般市民が対等性をもって取り組む改革をめざしていました。
見学させていただいたアントワープの精神科病院は、駅から徒歩圏内の街中にありました。
病室はすべて個室、保護室もその並びのひとつにあるのですが、今はほとんど使われていないということでした。
患者も病院スタッフも私服なので、良く確認しないと見分けがつきませんでした。
病室の窓からは街ゆく人の風景がよく見えました。
鍵は病院の出入り口にしかなく、午前0時~4時以外は施錠されず、町の人たちも入院患者も出入り自由だそうです。
入院したその日から退院に向けた計画を立て始めるとのことで、入院患者は病室からスポーツジムに通ったり、学校や職場に通ったりすることもあるそうです。
念のため、付け加えさせていただきますが、病院内や建物周辺のどこを見渡しても、セキュリティーオフィサーのような風貌の方や銃を携帯したポリスの姿を見かけることはありませんでした。
ここまでのお話しはベルギーの改革の本の一部に過ぎませんが、このようなベルギーの改革から学び、政策提言をしていこうとしている中で、今回の日本精神科病院協会の機関誌巻頭言を読んだときに、あまりの視点の違いといいますか、背景に見える精神科医療に対する理念の格差に唖然としました。
そして、何度か繰り返して読む内に、良くわからなくなってきました。この文章でいったい何を伝えたいのでしょうか?
ご自分の考えを直接文章化して載せたのであれば、内容の是非はともかく、このようなことを主張されたいのかということで、まだ納得がいきます。
が、許可をえているとはいえ、他の人が発言したこのような意見を機関誌の巻頭言に載せる意図がわかりません。
なぜ、何のために、何を伝えたくて、このような文章を日本の精神科医療をリードすべき機関誌の巻頭言に掲載しなければならなかったのでしょうか。
特に最後の方にある一文は衝撃的です。
『ところで、僕の意見は「精神科医にも拳銃を持たせてくれ」ということですが、院長先生、ご賛同いただけますか。』。
この文章は、読もうと思えば誰でも読めるものとして公表されています。
このような文章を精神疾患・精神障害を持つ人、その家族が目にしたときにどう思うとお考えなのでしょうか?
何も感じないと考えていらっしゃるのでしょうか?
私のまわりの家族の人は、このような文章を精神科医療のトップの人が掲載するなんて「信じられない」と言っていました。これでは、精神疾患のある人が危険な人だと言っているのと同じだ、とも。
私自身も、長女が統合失調症を発症してから、信頼できる医療者と出会うために何度か病院を変えましたが、そのたびに大変に苦労をしました。
今、やっとの思いで出会えたかもしれない主治医と、良い信頼関係をつくって治療につながっている多くのご本人や家族が、この文章を目にすることで、「え?!精神科医の人たちは、みんなこんなふうに私たち患者のことを見ているのか・・・」と、その信頼関係をも揺るがしかねないと感じるのは私だけでしょうか?
日本の精神科医療をリードするお立場の方であれば、そこまで思いを至らせていただきたかったと強く思います。
そして最後に、この「精神科医にも拳銃を持たせてくれ」の意見に、賛同するのかしないのか、そのお答えを、ぜひお聞かせいただきたいとも思っています。