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新しい薬の使い方

1 年前

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みんなねっとサロン では、精神障害・疾患のある方のご家族から、「薬」についてのお悩みが多く投稿されています。 月刊みんなねっと の過去の記事で、薬について取り上げた記事がありますので、一部抜粋して掲載させていただきます。

はじめに

みなさん、こんにちは。はじめまして、ドクトル・イチキです。今日は “適切な薬の使い方と新しい薬”についてお話ししてみたいと思います。

治療の考え方の変化

〜多剤大量療法から単剤少量療法へ〜

皆さんは病気の具合が悪い時にお医者さんに何をして欲しいと思いますか?大抵の方は「薬を増やして欲しい」、もしくは「薬を変えて欲しい」とお答えになります。しかしこのご希望のとおりにすることが必ずしも正しい対処であるとは限りません。

私が研修医の頃は、統合失調症やうつ病の患者さんなどの治療においては、ある薬剤が効かなければその薬の量を増やす、それでも効かなければ別の薬に変える、それでも効かなければその薬の量を増やし、それでも効かなければ別の薬を足す・・・といった様に、効き目を求めた薬物療法を行うという多剤大量療法が主流でした。

しかしよく考えればわかることなのですが、風邪薬だって三日分の薬をまとめて一回で飲んだからといって数時間後に治るわけではありません。急に良くしようとする治療には必ず反動がきます。そこで出てきた考え方が、薬はできるだけ種類を増やさず、また副作用が出ないように使いましょう、という考え方です。これが今の時代の好ましい治療である「単剤少量」です。

新しい薬の登場

 薬を身体の中に入れる方法は、大きく分けて「飲み薬(経口薬)」と「注射薬」と「貼り薬(外用薬)」があります。精神科の治療薬は長い間、飲み薬と注射薬がありましたが、最近ようやく貼り薬も出てきたので、患者さんはそれぞれの長所と短所を良く知って、自分にあった薬を選ぶことができるようになりました。これらの中には様々な工夫がなされた形があります。これを「剤型」と言います。今日はそれぞれの薬の代表的な特徴についてお話ししてみたいと思います。

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経口薬

 みなさんが一般に錠剤と呼んでいるものには現在、「普通の錠剤、糖衣錠、腸溶剤、徐放錠、舌下錠、口腔内崩壊錠」といった五つの種類があります。
 普通の錠剤の長所は何と言っても持ち運びしやすいことです。また二つ以上の薬を一回に飲む場合、薬局で一回に飲む分を一つの袋に入れてもらうこと(一包化と言います)で、一つ一つをいちいち取り出す手間が省けます。また薬を増やしたり減らしてゆく時にも自分で割線に沿って割ったりすることもできます。
 糖衣錠というのは、簡単に言えば表面がツルツルしている錠剤のことです。これは匂いがきつかったりする薬剤の表面をコーティングして飲みやすくしているという長所がありますが、半分に割ることが難しかったり、湿気に弱かったりするので、半分に切ったものを残しておいて次の日に飲むということができません。似たようなものに、薬を腸に到達して初めて溶け出すような特殊な膜で覆っている腸溶剤や、薬が徐々に溶け出して長時間効き目が続くような特殊な膜で覆っている徐放錠というものがあります。腸溶剤は腸に届くまでに溶けてしまうと効き目がなくなったり、徐放剤を噛んで飲んだりすると一気に血中の薬の濃度が上がって危険なので、服用の仕方に注意が必要です。
 同じく服用の仕方に注意が必要な剤型に「舌下錠」があります。舌下錠は口の中の粘膜から吸収させるために即効性があると言われています。ですので頓服として使うのに特に優れています。一方で普通の錠剤のように水でごっくんと飲んでしまうと全く効き目がないので、決められたとおりに舌下において10分間は水を飲んだり歯磨きをしたりしないようにしなければなりません。この薬剤も一包化はできません。

 口腔内崩壊錠は、薬の名前の後ろにD錠とかOD錠とかザイディスという名前がついているものが該当します。唾液でも溶けるので、水なしで飲めるということが特徴です。いろいろな薬剤で口腔内崩壊錠ができていますが、いちどきに普通の錠剤も飲まなければならない場合は、一包化もできませんし、その長所が十分には生きないかもしれません。

 カプセルも普通の錠剤と同じく昔から馴染み深い剤型です。しかし普通の錠剤のように半分に割ることができないのが弱点です。
 散剤や細粒というと大人の患者さんは嫌な顔をされる方が少なくないのですが、散剤や細粒の一番の長所は、細やかな用量設定が可能になるところです。私は4分の1錠という量を使うことがありますが、錠剤は半分には割れても4分の1に綺麗に割ることはできません。薬はその人に合った適切な量にする必要があります。飲みにくかったらオブラートで包むなどの工夫をして飲むと良いでしょう。
 液剤は、口腔内崩壊錠と同じように水なしで飲むことができることが大きな特徴です。昔はボトルの中から一回一回スポイトで吸わなければならずに手間がかかりましたが、精神科の薬では今はスティックのお砂糖のように、分包と言って、よく使われる量に最初から分けられていて持ち運びがしやすくなっています。科学的に証明されてはいませんが錠剤よりも即効性があると感じて頓服薬として使っている場合も多いようです。

注射剤

 注射剤の代表格は筋肉注射や静脈注射です。これらは何と言っても、内服薬よりも即効性があるため、救急外来などで用いられます。
 昔からあるのによく知られていない注射剤に持効性注射薬(昔はデポ剤、今はLAIと呼ばれることが多いです)という注射薬があります。持効性注射薬は一度注射をすると二週間ないしは四週間その効き目が持続しますので、他の薬がいらない場合は二週間か四週間に一度の通院の時に注射をするだけで、毎日薬を飲む手間から解放されます(八週間、十二週間の薬も開発されているようです)。

そして、飲み薬ではどのような薬でも薬を飲むと時間が経つほど身体の中で薬が分解されますので、新たに薬を飲む直前にはその薬剤の効き目が低くなります。薬が切れると調子が悪いと感じる方は、このせいかもしれません。持効性注射薬はそのようなことがないのが一番の長所です。そもそも毎日全く同じ時間に薬を飲むことは不可能ですし、飲み忘れてしまいやすい方にも向いています。注射が嫌だという気持ちはわからないではないですが、その気持ちさえ克服できれば、生活に最も影響の少ない治療法だと思います。

外用薬

 三つの剤型の中で最近登場したのが外用薬です。飲むということがないことが外用薬の一番の長所です。口腔内崩壊錠は水なしで飲めるので飲み込み困難なお年寄りでも大丈夫と言われていますが、本当に飲み込み困難なお年寄りには口腔内崩壊錠でも誤嚥して肺炎になる危険があります。短所があるとすれば、湿布と同じなので、かぶれやすい方の場合は使いにくいかもしれませんが、毎日貼る場所を変える工夫をすることで対処するようにして貰っています。

おわりに

薬の効き目を最大限にするためには、患者さん自身が薬の必要性を理解して自分に合った適切な量を自分の意思で飲みながら、薬以外の治療を並行してしっかり行う必要があります。そのためにも自分に合った薬を選ぶことが大切です。
(いちきまさひこ)

月刊みんなねっと 2020年4月号(P14~P17)より転載

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