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親子関係に大切なこと

1 年前

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Aさんは物静かなお方(母親)で、ご主人と病気の息子さんと三人で暮らしています。

ある日の家族SST(社会生活技能訓練)で、リーダーからメンバーSSTに参加している当事者の思いを聞きました。「食事の時、テレビを消してほしい。テレビは、突然恐ろしい事件や凄惨な事故などが出るので、怖い。不安になる。でも家族は、食事の時、テレビを見ながらが当然という感じなので、消してほしいとはとても言えない」と。

当事者のほとんどが、そう思っていると聞いて、Aさんは帰宅後、息子さんに聞いたそうです。「僕もそう思っているよ」と聞いたAさんは、その日から食事時のテレビを消し、お料理に合わせた曲を選び、音楽を聴きながらの食事に変えたそうです。これは、ほんの一例ですが、Aさんはその後、息子さんの気持ちを聞きながら、息子さんの湧いてくる不安を、一つずつ解消する努力を重ねたそうです。

 私に来た今年の年賀状には、次のように書かれていました。
「息子は一人暮らしをして7年になります。症状も安定し、薬も減っています。就労はしていませんが、生活技術が確実に進歩し、会話も普通にできるので、息子に会うのが楽しみです」と、とても嬉しい内容でした。

 Aさんは、着実に良い方向の道を進まれましたね。それは、こっちの生活のレベルに引き上げるのではなく、息子さんの気持ちに寄り添いながら、息子さんの不安を、安心に変える工夫を続けてこられたということです。根底にあるのは、息子さんの現在位置を引き受けるということでしょうね。

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 娘さんを深く愛している、Bさん(母親)の涙ながらの発言です。
「私は娘を大事に思っています。子供のころ、素直だった娘が発病以来、人が変わったように自分勝手になり、私の言うことを聞きません。私は娘を治してやりたいのです。

 今朝もこうでした。娘は毎日、作業所に行くのですが、朝もなかなか起きないし、起きても服を着るのにだらだらと時間がかかり、しかもその服えらびがまったくだめで、時間がないのに、食事しながら何回もトイレに行くし、駅まで徒歩五分と近いのですが、ギリギリで玄関を出るので、いい大人が駆け出して行くんですよ。私は叱咤(しった)、叱咤(しった)の連続です」。

 Bさんの涙は本物だと思います。気持ちもよくわかります。前述のAさんが、息子さんの現在位置に合わせた対処と違って、Bさんは自分の人生観や価値観や常識という概念のフィルター越しに娘さんを見るので、娘さんの行動を否定的に捉えてしまい、治してやりたい一念から注意や叱責が出てしまうのでしょうね。

人は褒められて自信がつくのです。認められてやる気が出るのです。
いつも否定されていたら、悲しみと怒りと反感だけが育ってしまうでしょう。良かれと思うやり方が、逆の結果になることが多いのです。
大人にさせたかったら、親離れさせたかったら、自分の子離れが先です。

要は、相手を自分の意のままに動かすことでなく、相手の現在位置に寄り添って、それに対処することです。

(たかもりのぶこ)

月刊みんなねっと2020年12月号より転載

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