公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会
コラム サポート情報室

診断書の書き方―生活上の困難をどのようにとらえ主治医に伝えるか

2013年7月4日掲載

 障害年金は日常の家庭生活、社会生活に障がい(困難性)があることが受給に必要な条件となっています。症状などの機能の障がいに加えて、この生活上の障がいを診断書上に正確に表すことが大変重要です。診断書は主治医が書くものですが、主治医にはなかなか日常生活の様子がわかりにくいということがあります。そこで、家族や本人が日頃生活していく上での問題を主治医に正確に伝えることが大切になってきますが、実際は難しいことでもあります。家族が主治医に生活の様子を伝える場合の生活上の問題点をどう捉えるか、主治医への伝え方について具体的な例をあげて説明したいと思います。

◆診断書で大切なところは、「日常生活能力の判定」

 発病から長い間生活を共にして支えてきた家族が、どんな生活上の問題があるか、どのような援助をしてきたかを客観的に捉え、説明するのは結構難しいと言えます。家族にとってそれが当たり前の状態になっていますし、1つ1つを日々意識することはしんどいことでもあります。またそれを嘆きや愚痴として話すと、時として「過干渉な家族」「愚痴っぽい家族」ととられ、障がい(困難性)が正確に伝わらないことにもなりかねません。客観的に問題点をとらえ、上手に伝えることが必要です。

 さてまず日常生活の障がいを客観的に捉えることから始めます。障害年金の診断書裏面には、「ウの2 日常生活能力の判定」というのがあります。6項目について4段階の答えがあり、○をつけるようになっています。「自発的に(適切に)できる」と「自発的に(概ね)できるが援助が必要」に○が多いと、非該当になる可能性があります。実はほとんどの精神障がい者の実態は、「自発的にはできないが援助があればできる」か「できない」に該当します。ここが重要なところです。それぞれの項目について、実態をどのように理解し、把握するか考えていきましょう。 

◆助言や指導が必要とは、どういうことを指すか?

 まず前提として、すべての項目について共通しているのは、「病院や施設、家庭ではなく、本人の一人暮らしを想定する」ことと、「助言や指導を必要とすることで、身体介護を含まない」ということです。つまり、保護や援助をしてくれる人がいない状況でどうかと問われているということと、スプーンで食事介助をするといった身体的なことではなく、助言や指導の必要性をたずねているということです。 

①適切な食事摂取 

 耳慣れない言葉です。自分からバランスの良い食事を用意して、規則的に食事ができていますか? 起きるのが遅くて1日2食になっているとか、血糖値が高いのに過食する、甘いものを食べてしまう、親が食事を用意しており自分ではできないという場合は、「自発的にはできない」「できない」ということになります。一人暮らしの人が、コンビニで食事を調達する場合、偏りがないかが問題です。決まったものしか買わない場合などは「できない」になります。ある事例では、1週間に一度親がアパートを訪ね、日頃本人が買わない食品をまとめて手渡していました。身近な人にしかわからないことですので、日々の暮らしに注意してください。

②身辺の清潔保持

 これも難しい表現で、範囲が広いです。まず風呂に入れるかということが頭に浮かびますが、お風呂には入るがお湯に浸かるだけという人が少なくありません。身体を洗わない、髪を洗わない、洗っても一部だけということもあります。お風呂は疲労感の強い人には大仕事のようです。服装も、上の服は着替えるけど、下着は取り替えない。気候に釣り合わない服装で大汗をかくとか、逆に寒い時期に極端な薄着をするといったことも、清潔とは直接結びつかなくても身辺のことが適切にできていないということです。床屋に行かないので、親が髪を切っているという場合もあるでしょう。いずれも「自発的にはできない」ことになりますが、こうしたことに本人は気がついていないか、気がついていても主治医には言いにくいことです。家族にとっては日常手伝ったり、注意したりしている事柄です。助言も援助も受けつけないのであきらめたという場合もあるでしょう。しかしこうしたことは意識しておかないと、「何とかやれている」という言葉に集約されてしまいます。一人暮らしの方で、ヘルパーさんが家の中に入って初めて、お風呂場が全く使われてなかったことがわかった事例もあります。生活の内容は本人から聞いたり外から見たりしただけではわからないことが多くあります。

③金銭管理と買物

 金銭管理というと、お金の使いすぎを考えがちですが、使わなすぎも問題です。特に一人暮らしで、極端にお金を使わないで、生活内容全体が貧困になっている場合は、重い生活障がいがあると言ってよいと思います。お金が減ることに強い不安があって、買えない人もいます。いずれも「できない」「自発的にはできない」になるでしょう。「節約」と「買えない」は全く性質の違うものです。また目覚まし時計など、同じものをいくつも買ってしまう人がいました。本人も悩んでいましたが、止められずにいます。買物が適切に「できない」という状態です。買物で品物が選べずに、結局一人では買えないで帰るという人もいます。金銭管理とは関係しませんが、やはり生活上の障がいです。お金を使いすぎるというのは、自由に使えるお金との関係もありますから一概に言えませんが、使い方の問題があります。数日で使い果たしてしまうために、分割して渡していることもあります。たばこと缶コーヒーで全部使うとか、パチンコに使ってしまうとか、計画的にバランス良く使えない悩みがあれば、「自発的にはできない」状況です。今一度見直してみてください。

④「通院と服薬」

 通院は毎回決められたとおり、自分で行けていますか?薬は自分で管理して、問題なく飲めていますか?通院日については家族が常に気にかけて本人を促しているとか、時には一緒に付いて行っている人も多いのではないでしょうか。ご本人が通院や服薬を嫌がるということもあるでしょう。また一人で行っていても、主治医に状況を話せない、薬はもらってくるが生活が不規則で定められたとおりに飲めない、薬の量や種類を自分流に調節してしまうといった悩みをよく聞きます。一人で通院している、また自己管理しているから問題がないとは言えません。服薬状況は一人暮らしの場合は特に気がかりなところです。本人との対話、病状の揺れ動きに注意するとともに、主治医や関係者と連絡をとりあって、通院や服薬の状況を把握しておきましょう。

⑤「他人との意思伝達及び対人関係」

 これもわかりにくい表現です。意思伝達というと、発語の能力や言葉の理解力と捉えがちですが、精神障がいの場合はそのことを問題としていません。家族も含めて、人に対して自分の意思や意見が言えたり、会話が自らスムーズにできるかどうか、場に応じた受け答えや挨拶、会話ができるか、あるいは緊張や不安の度合いなどが問題にされるところです。まず家でも外でもあまり話さないで返事をするくらいという、会話が少ない人が多いです。意思伝達に自発性が少なく、不十分ということですね。自室や家に引きこもりがちであるとか、人の多い所は緊張や不安が強く、出にくい場合も対人関係に大きな問題があるといえます。また統合失調症の人は注意力の幅が狭まって、結果的に対人関係がうまくいかない場合があります。母親と同じ町内に独りで住んでいて、毎日のように道で母親とすれ違うのに、全く気がつかないという事例があります。知らぬ振りをしているのではなく、気づかないのですが、他人の場合は誤解されることになってしまいます。およそ日常的なことなので、慣れてしまっていることが多いのですが、時々意識してみてください。

⑥「身辺の安全保持及び危機対応」

 どういうことを指しているのかわからないという質問の多い項目です。精神障がいで問題になるのは、たばこの火の始末があります。灰皿が山のようになっていたり、消し方が不十分な場合があります。また精神症状のためにぼーっとしてしまって、ガスコンロの火をつけっぱなしにしたためにぼやを起こした事例もありました。注意力がうまく働かないときは、火の始末ばかりでなく、自炊で包丁を使うときや、道を歩いているときの車や自転車への注意も不十分になります。薬が多く体が思うように動きづらい場合も、身辺の安全保持・危機対応は困難と判断すべきでしょう。
 以上、6つの項目について説明しましたが、他にも個人によってさまざまな困難性があります。長い間に声をかけたり、手助けすることが当たり前になっている日常をもう一度、客観的に見直してください。
1つ1つについて人それぞれ、さまざまな問題があります。マイナス面ばかり強調するようですが、障害年金の診断書は、困難性を明確にすることが求められています。しっかりと生活上の障がい(困難性)を主張してください。

◆生活の問題点を主治医にどのように伝えるか

 さて、こうした日常生活上の問題点をどのように主治医に伝えるかということが次の課題です。診察時によく同席したり、電話で話したりして、家族と主治医とのコミュニケーションがよくできている場合はあまり心配ないのですが、通院は本人だけという場合に時々行き違いが起こります。年金診断書提出の時だけ行って、主治医にあれこれ言うのは気が引けるという方もいるでしょう。無拠出制の障害基礎年金の場合は7月に、拠出制の障害年金や厚生(共済)障害年金を受けている人は誕生日月に診断書を提出することになっていますので、その時期までに必要なことは伝えるようにします。家族と本人とが障害年金の受給のために必要なこととして、日常生活の課題を話し合え、本人から医師に伝えられると一番よいのですが、もれてしまう事柄もあります。本人が気づかないこと、伝えられないことは、家族から具体的に今の生活上の課題として伝えてください。少なくとも年に2回ぐらいは主治医に会って話ができるとよいですね。家族が行くことを本人がどうしてもいやがる場合、手紙で伝えることも考えられますが、その場合は要点をまとめて1枚くらいにしたほうが、主治医も読みやすく、カルテにも綴じ込みやすくなります。作業所やデイケア、授産施設などのスタッフは、日中生活を共にしていて、家族の気がつかない面を見ていることがあります。家族と一緒に主治医と会う機会を作るとか、スタッフから機会を見て主治医に施設での様子を伝えるようにしてもらうことも効果的です。

◆働いていると、普通に生活できるという誤解

 また障害年金の受給について、現在もまた将来的にも大きな問題となるのが、短時間働いている人の障害年金です。働いていると日常生活が普通にできるという誤解がありますが、多くの場合、実際は短時間でも働くことで精一杯で、身の回りのことや家事など生活を維持する気力、体力がありません。家族が生活の部分をほとんど丸抱えで、就労を支えている部分や、ホームヘルプ、就労の支援者、職場の理解など、支えている部分が精神の障がい部分です。身体障がいにたとえれば、障がいをおぎなう車椅子やバリアフリーの環境といえるでしょうか。今、障がい者の就労への取り組みが進められている中、ますます精神障がいとは何かの議論を深める必要を感じます。

(良田かおり/よしだかおり、2007年8月号より)

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